
糖尿病
糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖)が高くなる病気です。糖は、体の細胞がエネルギーとして使う大切なものですが、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むためには、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンが必要です。何らかの理由でインスリンが不足したり、その効きが悪くなったりすると、血糖がうまく下がらず、糖尿病が発症します。
血糖が高い状態が続くと、全身の臓器にさまざまな悪影響を与えることがあります。しかし、軽症の糖尿病では自覚症状がほとんどないことが多いため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。
そのため、定期的な健診を受けることがとても大切です。健診を活用して、早期に発見し、早期に対応することで、糖尿病の予防や進行を防ぐことができます。
こんな症状は受診をお勧めします
- 健診等で血糖値の異常を指摘された
- 尿の量が多くなる(多尿)
- のどが渇いて水分をたくさん飲む(口渇、多飲)
- 食事を減らしていないのに体重が減る
- 急激に体重が増えた
- 疲れやすくなる
- 足がむくむ
- 手足が痺れる
- 立ちくらみがある
- 視力が低下してきた
- 怪我ややけどをした時の痛みの間隔が鈍い
- 血のつながっている家族(両親、兄弟)に糖尿病の人が多い
糖尿病4つのタイプ
糖尿病は病態によって「1型糖尿病」と「2型糖尿病」と「その他の糖尿病」、「妊娠糖尿病」の4種類に分けられます。
- 1型糖尿病
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1型糖尿病は、膵臓にあるインスリンを作るベータ細胞が壊れていき、インスリンが分泌されなくなる病気です。主に若い頃に発症することが多いのが特徴です。
原因は完全には解明されていませんが、自分の免疫細胞が誤って膵臓の細胞を攻撃する「自己免疫」によるものと考えられています。1型糖尿病では、生涯にわたってインスリンの補充が必要となります。 - 2型糖尿病
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2型糖尿病は、日本で最も一般的なタイプで、糖尿病患者さんの95%以上がこのタイプです。原因は明確ではありませんが、生活習慣、遺伝、加齢、ストレスなどが関与していると考えられています。
生活習慣がそれほど悪くなくても、インスリンの分泌が不足して血糖が上がることがあり、逆に、インスリンが十分に分泌されていても、肥満や運動不足が原因でインスリンの効きが悪くなり、血糖値が上がることもあります。
生活習慣に改善の余地があれば、食事や運動を見直すことから始め、必要に応じて飲み薬やインスリン注射を使った治療を行います。 - その他の糖尿病
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糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。
- 妊娠糖尿病
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妊娠中は、ホルモンの影響で血糖値が上がりやすくなります。母親の血糖値が高いと、赤ちゃんに影響が出る可能性があるため、妊娠糖尿病は厳格にコントロールする必要があります。治療薬には、赤ちゃんへの影響が少ないインスリンが使用されます。
どのタイプの糖尿病の場合も、血糖濃度が高いことで起こってくる影響は共通していますが治療方法が異なります。適切な治療を受けることで、病気の進行を防ぎ、健康な生活を維持することができます。
糖尿病の治療
糖尿病と聞くと、「食事を減らさないと」「体重を落とさなきゃ」と思われがちですが、実はすべての方に当てはまるわけではありません。血糖値が上がる原因は、大きく分けて ①インスリンの効きが悪いタイプ と ②インスリンの量が足りないタイプ の2つがあり、それぞれ治療法が異なります。
- ① インスリンの効きが悪いタイプ(インスリン抵抗性)
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- 太っている方、体脂肪が多い方に多い
- 脂肪がインスリンの効きを悪くするため、血糖値があがってしまう
このタイプの方は、『食事制限』や『減量』がとても効果的です。脂肪を減らしていくことで、最初は薬が必要だったとしても、体脂肪が減ることで薬を減らし、中止できる場合もあります。
ただし、長期間インスリンの効きが悪い状態が続くと、膵臓が疲れて インスリンが「効かない」だけでなく「出せない」状態 になってしまうことがあるため、早めの対策が大切です。
- ②インスリンの量が足りないタイプ(インスリン分泌不全)
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- 痩せ型の方や高齢の方に多い
- 膵臓が十分なインスリンを作れず、血糖値が高くなる
- 生活習慣を整えても改善しにくいことがある
このタイプの方は、無理な食事制限をすると逆効果になってしまうことがあります。もともと膵臓から出るインスリンの量が少ないため、食事を減らしても血糖値が下がらず、むしろ栄養不足を招く可能性があります。
治療では、無理な食事制限をせず、膵臓に負担をかけすぎない方法を選びます。必要に応じてインスリンを補充することで、血糖値を適切にコントロールし、体への負担を減らすことができます。インスリン注射は「最後の手段」ではなく、適切なタイミングで使うことで健康を守るための大切な治療法のひとつです。
自分に合った治療法を選ぶことが大切
同じ「血糖値が高い」という状態でも、その原因や治療方法は人それぞれ異なります。だからこそ、糖尿病の治療はその人に合った方法を選ぶことが重要です。
もし治療法について不安や疑問があれば、ぜひ専門医に相談してみてくださいね。