🎬 映画『国宝』から考える
「親子で糖尿病」——それは“自己責任”ではありません
遺伝と体質、そして支える社会の視点から
映画『国宝』では、半次郎と俊介が親子で糖尿病を患う姿が描かれています。
半次郎は病を抱えながらも日々を丁寧に生き、俊介もまた父の背を見て葛藤しながら人生を歩んでいきます。
血縁を超えたつながり、家族の歴史、そして病との向き合い方——
この作品を通して、
「糖尿病って遺伝するの?」
「なぜ親子で同じ病気になるの?」
と疑問に思われた方もいるかもしれません。
🧬 糖尿病は「遺伝+環境」が重なる病気です
2型糖尿病は、食事・運動・睡眠不足などの生活習慣と深く関係しています。
けれど、実は「なりやすい体質」を遺伝的に受け継いでいるケースも多いのです。
たとえば:
- 親が2型糖尿病 → 子どもの発症リスクは約2〜3倍
- 家族に複数の糖尿病患者 → 最大で10倍以上のリスクになるという研究も
つまり、糖尿病は生活習慣だけが原因ではありません。
体質や背景も大きく影響する、複雑な病気なのです。
💭 “だらしない”は誤解!糖尿病に貼られたレッテル
糖尿病というと、
「節制できない人の病気」
「自己管理ができない人の責任」
といった誤解や偏見を持たれてしまうことが、今も少なくありません。 けれども、それはあまりにも表面的で浅い理解です。
私たち医療者も、そうした誤解を解き、正しい知識を伝える責任を感じています。
🧊 体質は変えられなくても、“行動”は変えられる
糖尿病になりやすい体質を持っていると、ほんの少しの生活の乱れやストレスでも血糖値が上がり、糖尿病を発症してしまうことがあります。
でも、それは「諦める理由」ではなく、先に気づけるチャンスです。
たとえば、こんな予防が可能です:
- 家族に糖尿病の方がいる → 40代以前からの定期検査を
- HbA1cや空腹時血糖で、“予備軍”の段階から対策
- 食事・運動の工夫で、発症リスクは半分以下に減少することも可能
糖尿病は、“気づいたとき”が予防のスタート!
早めに気付けた方が、将来の選択肢を増やせます。
💬 “自己責任”ではなく、「共に支える医療」へ
映画『国宝』でも描かれていたように、糖尿病は本人だけの問題ではなく、
家族や社会の理解が必要な病気です。
誤解や偏見ではなく、
その背景にある体質・環境・支えのあり方を知ること——
それが、「共に生きる医療」につながっていきます。
🧬 1型糖尿病についても少しだけ触れておきます
映画で描かれたのは主に2型糖尿病と考えられますが、糖尿病には他にも、1型糖尿病というタイプがあります。
これは自己免疫疾患の一つで、膵臓のインスリンを作る細胞が壊されてしまうことが原因。
生活習慣とは関係なく、幼少期〜若年成人に多く見られます。
2型と同様に、不正確な偏見を受けることもあり、これも大きな誤解です。
🧬【1型糖尿病と遺伝について】
1型糖尿病にも「なりやすい体質」はありますが、発症そのものは遺伝だけで決まるわけではありません。
ウイルス感染などの環境要因も影響することが知られています。
発症リスクの目安:
- 父親が1型糖尿病 → 子の発症リスク:約6〜10%
- 母親が1型糖尿病 → 約2〜4%
- 兄弟姉妹に患者 → 約6%
つまり、「親が1型=子どもも必ずなる」わけではありません。
このことは、ご家族にとって安心材料の一つになるかもしれません。
🌱 最後に 〜 健康は変えられます
「遺伝だから仕方ない」
「家族に糖尿病が多くて不安」
そんな思いを抱える方も、前もって知って、対策を始めれば、糖尿病は防げる病気です。
映画の中で、病と向き合いながらも信念を守ろうとする半次郎と、
それを支える俊介の姿は、
私たちの日常や、“その人らしさ”を支える医療にも重なります。
📍 ご相談はお早めに。正しい情報が、あなたを守ります
気になる症状や不安がある方は、早めに医療機関へご相談ください。
以下の情報も参考にできます:
🔗 日本糖尿病学会|一般向けページ
🔗 糖尿病ネットワーク(患者・家族向け情報サイト)
📝 参考文献・データ出典
- 日本糖尿病学会(JDS)
- American Diabetes Association(ADA)
- Type 1 Diabetes Genetics Consortium
- 厚生労働省「国民健康・栄養調査」 等