HbA1cとは?検査の意味と基準値をわかりやすく解説

HbA1cとは?検査の意味と基準値をわかりやすく解説

HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質にブドウ糖が結合したものです。血液中のブドウ糖(血糖)が多いほどヘモグロビンに結びつく量も増えるため、HbA1cの値が高くなります。いったん結合(糖化)したヘモグロビンは赤血球の寿命が尽きるまで元に戻らないため、HbA1cは過去1~2ヶ月間の平均的な血糖値を反映する指標です。つまり検査時点の“一瞬”の血糖値を示すのではなく、ここ1~2ヶ月間の血糖コントロールの状態を知ることができるのがHbA1cなのです。

一般的な血糖値は食事や運動、ストレスなど様々な要因で日々大きく変動します。一方でHbA1cは長期間の平均値のため、検査当日の食事や運動の影響を受けにくく、空腹時・食後を問わずいつでも測定できるというメリットがあります。そのため医師にとって、血糖値が一時的に高くてもHbA1cが正常であれば最近の血糖コントロールは良好、逆にHbA1cが高い場合は「慢性的に血糖が高め」であることを示す重要なサインとなります。検査は採血によって行い、健康診断や医療機関で手軽に受けられる血液検査です。

HbA1cの検査の目的と重要性

HbA1c検査は糖尿病の診断や治療経過の確認において最も重要な検査の一つです。例えば、健康診断で空腹時血糖値が高いと指摘された場合でも、同時に測定したHbA1cが正常範囲に収まっているかどうかで診断や方針は変わります。逆に空腹時血糖値がギリギリ正常範囲でも、HbA1cが高ければ将来糖尿病になるリスクが高い「糖尿病予備軍」である可能性があります。

糖尿病の診断基準にもHbA1cは用いられ、早朝空腹時血糖値126mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上のいずれかに該当すると糖尿病型と判定されます。特にHbA1cが6.5%以上であれば糖尿病の可能性が高いとされ、精密検査や治療開始が推奨されます。ただしHbA1cはあくまで平均値の指標です。一時的な血糖スパイク(急激な高血糖)が頻繁に起きていても、平均値であるHbA1cがそれほど高くないケースもありえます。HbA1cが安定していても油断は禁物で、食後高血糖など日内変動にも注意する必要があります。

HbA1cの基準値(正常値と境界値)

HbA1cの基準値は一般に「正常値」「境界型(糖尿病予備軍)」、「糖尿病型」に区分されます。日本人間ドック学会ではHbA1cの基準値を5.5%以下(NGSP値)としていますが、臨床ではおおむね次のような目安が用いられます。

  • 正常値:4.6〜5.7%程度(食生活や体質によって個人差があります)
  • 境界型(糖尿病予備軍):5.8〜6.4%前後
  • 糖尿病型が疑われる値:6.5%以上

正常値の場合は現時点で血糖コントロールは良好と考えられますが、境界型(5%台後半〜6%台前半)に該当する場合は要注意です。境界型だからといって体への影響が全くないわけではなく、この段階から食事内容や運動習慣を見直すことが肝要です。放置すると将来的に糖尿病を発症するリスクが高いため、早めに生活習慣の改善に取り組みましょう。6.5%以上は糖尿病の可能性が高い値であり、一度の測定で6.5%を超えた場合でも、念のため別日に再検査を行って診断を確定するのが一般的です(状況によりますが、HbA1cが7%を超えていれば多くの場合すぐ治療開始が検討されます)。

なお、日本では2012年4月よりHbA1cの測定値が国際標準値(NGSP値)に統一されています。それ以前は日本独自のJDS値が使われており、NGSP値より約0.4%低く表示されていました。現在は一般的にNGSP値(%)で表示されますので、古い資料を見る際は注意が必要です。例えば旧基準のHbA1c(JDS)5.6%は、新基準(NGSP)では約6.0%に相当します。

HbA1c検査の流れと特徴

HbA1cの検査方法は血液検査(採血)です。腕からの採血で少量の血液を取り、専用の分析装置でヘモグロビンA1cの割合を測定します。結果が出るまでの時間は検査機関や医療機関によりますが、食事の影響を受けないため事前の空腹準備は不要で、日中の都合の良い時間に受けることができます。例えば朝食後や昼食後でも問題なく検査可能です。

新宿サザンクリニックを含め多くの医療機関では、院内に簡易な分析装置を備えており当日中にHbA1cの結果説明が可能です。当院(新宿サザンクリニック)では院内迅速検査機器を導入しているため、空腹時血糖値やHbA1c、尿検査などの結果をその日のうちにお伝えできます。検査自体も数分程度で済みますので、忙しい方でも受診しやすい環境です。また、当院は新宿駅南口から徒歩0分のアクセスで夜遅くまで診療しており、受診後すぐに院内でお薬をお渡しできる院内処方体制も整えております。こうした体制により、検査から治療開始までスムーズに行えるよう工夫しています。

HbA1cの目標値と管理の指標

糖尿病と診断された場合や予備軍と判定された場合、HbA1cをどの程度まで下げるか(あるいは維持するか)が治療・予防の目標となります。一般的にはHbA1cを7.0%未満にコントロールすることが合併症予防の観点から重要だとされています。多くの糖尿病患者さんの目標値は「7.0%未満」ですが、年齢や合併症の有無、低血糖リスクなどによって個別に目標が設定されます。例えば若年で合併症がない方は6%台前半を目指すこともありますし、高齢の方や重症低血糖のリスクが高い方では無理に下げすぎず7〜8%を目安とすることもあります。

HbA1cが高くなるほど、またその高い状態が長く続くほど様々な合併症のリスクが高まります。具体的には、細小血管が障害される糖尿病の三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)の発症リスクや、大血管が障害される動脈硬化による心筋梗塞・脳卒中リスクが上昇します。そのため、糖尿病と診断された方はできるだけ早期にHbA1cを適正な目標値まで下げ、その状態を維持することが大切です。研究により、糖尿病発症早期からHbA1cを7%未満に保つことで将来の合併症発症率を大きく減らせる(いわゆる「レガシー効果」)ことも示されています。ただし闇雲に厳格に下げれば良いわけではなく、低血糖にならない範囲で無理のない管理が重要です。

HbA1cが高いと言われたら…改善方法は?

健康診断などで「HbA1cが高め」「糖尿病の疑い」と言われた方や、既に糖尿病と診断され治療中の方にとって、HbA1cを下げる(改善する)ためのポイントは主に生活習慣の見直しです。【食事】【運動】の両面から血糖コントロールを改善することで、薬を使わずに血糖値を正常化できるケースも少なくありません。ここではHbA1c改善のために有効な具体策をわかりやすく解説します。

  • 食事療法(食生活の見直し)
    • まずは毎日の食事を見直しましょう。糖質の過剰摂取を控え、野菜や食物繊維を先に食べる(ベジファースト)ことで食後血糖の急上昇を抑える工夫が有効です。また、白米やパンなどの炭水化物は適量にとどめ、可能であればGI値(血糖上昇指数)の低い玄米や全粒粉パンを取り入れるとよいでしょう。甘い飲み物や間食もできる範囲で控え、規則正しい食事時間と適切なカロリー管理を心がけます。過度な食事制限は長続きしないため、栄養バランスを保ちながら無理なく続けられる範囲で改善することが大切です。
  • 運動療法(運動習慣の改善)
    • 運動は血糖をエネルギーとして消費し、インスリンの効きを良くする効果があります。有酸素運動(例えば速歩きや軽いジョギング、サイクリング、水泳など)を毎日30分程度行うのが理想ですが、難しい場合は「ながら運動」や日常生活で体を動かす工夫でも構いません。エレベーターではなく階段を使う、一駅歩く、家事や掃除で体を動かすなど、小さな積み重ねが効果を発揮します。筋力トレーニングも取り入れると基礎代謝が上がり血糖の利用が促進されます。運動は継続することが何より重要なので、自分に合った方法で無理なく続けましょう。
  • 適正体重の維持・減量
    • 食事と運動の結果として体重・体脂肪が減ると、インスリンの効きが格段に改善します。特に内臓脂肪を減らすことがHbA1c改善のカギです。内臓脂肪が多いとインスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)が強まり血糖が下がりにくくなるため、ウエスト周りをすっきりさせることが目標です。日本人では体重を約3kg減らすだけでも血糖値だけでなく脂質や血圧も改善する効果があると言われています。実際、糖尿病予備群の方を対象にした米国の大規模研究(DPP)でも、食事・運動を中心とした集中プログラムで平均体重を数kg落としたところ、糖尿病の発症率が大きく低下(約58%減少)したことが報告されています。まずは無理のない範囲で1〜3kgの減量を目指し、その効果を実感しながら継続していきましょう。
  • 生活リズムの改善
    • 睡眠不足やストレスもホルモンバランスを乱し血糖値に影響を与えます。十分な睡眠(毎日6〜8時間程度)を確保し、過度な飲酒や喫煙は控えるようにしましょう。ストレス対策として適度に休養をとったり、趣味やリラックスできる時間を持つことも大切です。生活リズムを整えることで自律神経やホルモン分泌が安定し、血糖コントロールの改善につながります。

以上のような生活習慣の見直しによって、多くの場合HbA1cは改善に向かいます。近年は飲み薬も飛躍的に進歩しており、食事・運動療法を組み合わせればHbA1cが10〜12%台と高い方でも内服薬でコントロールできるケースが増えています。必要に応じてインスリン注射やGLP-1受容体作動薬などの新しい注射薬を併用することもありますが、いずれにせよ薬物療法の効果を最大限に引き出すためにも生活習慣の改善は不可欠です。まずは日常生活を見直し、それでも改善が難しい場合は主治医と相談しながら薬物療法を検討するとよいでしょう。

当院でのHbA1c検査とサポート体制

新宿サザンクリニックでは、糖尿病専門医(日本糖尿病学会認定専門医)が在籍し、患者様一人ひとりに合った丁寧なサポートを行っています。検査でHbA1cが高めに出た場合も、ご本人の生活背景や体調を踏まえて無理のない改善策を一緒に考えていきます。

「いきなり食事制限と言われても続けられるか不安…」

「運動は苦手だが大丈夫か?」

といったお悩みに対しても、科学的根拠に基づいたアドバイスをいたします。

当院は平日夜遅くまで診療しておりお仕事帰りにも立ち寄りやすく、前述のとおり院内でHbA1c即日検査が可能ですから、忙しい方でも効率よく健康管理ができます。

また、結果が基準値を少し超えた程度だからといって放置しないことが重要です。

【「前日に食べ過ぎただけかも」「少し高いくらい大丈夫だろう」と自己判断せず】

HbA1cが基準値を超えていると言われたらまずは一度医療機関を受診してください。

早期に対策を講じれば、糖尿病の発症や進行を防ぎ健康な生活を維持できる可能性が高まります。新宿サザンクリニックでは糖尿病予備軍の段階から適切な検査・指導を行い、皆様の健康管理のお手伝いをさせていただきます。やさしく丁寧な診療を心がけておりますので、HbA1cや血糖値について不安のある方はお気軽にご相談ください。