排尿痛

排尿痛とは？女性に多い原因と症状の特徴、治療法と予防策

排尿時に痛みや不快感を感じる症状を排尿痛（はいにょうつう）と呼びます。単なる一時的な違和感から強い灼熱感まで程度は様々ですが、多くの場合、尿路（腎臓・膀胱・尿道）の炎症や感染が原因となっています。

特に忙しい女性ではトイレを我慢しがちで、疲労やストレスによる免疫力低下も重なり、膀胱炎などの尿路感染症を起こしやすくなる傾向があります。

排尿痛そのものは病名ではなく何らかの疾患による症状ですが、放置すると腎臓まで感染が広がったり（腎盂腎炎）、症状が悪化するケースもあるため注意が必要です。

排尿痛の主な原因と考えられる疾患

排尿痛は様々な疾患によって引き起こされますが、最も一般的な原因は尿路の細菌感染による炎症です。以下に主な原因疾患を挙げます。

急性膀胱炎（きゅうせいぼうこうえん）

膀胱に細菌が侵入して炎症を起こす疾患で、排尿痛の原因として最も頻繁に見られます。

特に女性に多く発症することが知られており、20～40代の女性ではトイレを長時間我慢したり性交渉をきっかけに膀胱炎になるケースがよくあります。

女性は尿道の長さが男性より短いため細菌が膀胱に到達しやすく、感染リスクが高いのです。急性膀胱炎では排尿の終わり頃に下腹部や尿道に痛み（排尿終末時痛）が走るのが典型で、同時に尿が近くなる（頻尿）、排尿後に残尿感がある、尿が白く濁る、血尿が見られるといった症状を伴います。通常、膀胱炎自体は抗菌薬（抗生物質）で治療すれば数日で改善しますが、適切に治さず何度も再発を繰り返すと慢性化し、排尿のたびに痛みを感じるようになることもあります

尿道炎・性感染症（性器クラミジア感染症、淋菌感染症など）

尿道炎は尿道の粘膜が細菌感染などで炎症を起こした状態で、男性に多い疾患ですが女性にも起こります。

特に性感染症（STD）による尿道炎が若年層で増えており、原因菌として淋菌やクラミジアが代表的です。

淋菌やクラミジアによる尿道炎では、排尿の最初に強い焼けつく痛みを感じたり尿がしみるように痛むことが多く、男性の場合は黄色や白色の膿が尿道から出て尿が濁るなどの症状を伴います。一方、女性の場合は感染しても自覚症状が軽いか全く出ないことも多く、気づかないうちに感染が広がってしまうことがあります。性感染症が原因の尿道炎を放置すると、尿道狭窄（尿道が狭くなる病態）を招き排尿困難になる恐れがあるため、症状が軽微でも早めに医療機関で治療を受けることが大切です。なお、クラミジア・淋菌感染症は放置すると不妊症や新生児への感染（出産時の眼感染症など）につながるリスクもあるため注意が必要です。

腎盂腎炎（じんうじんえん）

腎盂腎炎は膀胱からさらに細菌が尿管を逆流して腎臓まで達し、腎盂・腎実質が感染・炎症を起こした状態です。膀胱炎が悪化した場合に起こることが多く、38℃を超える高熱や寒気、背中から腰にかけての激しい痛み、吐き気・嘔吐など全身症状を伴います。排尿痛も見られますが、膀胱炎症状（頻尿や排尿時の痛み）が軽くても急に発熱して発症する場合もあります。

特に女性は体の冷えや疲労で免疫が落ちると腎盂腎炎を起こしやすい傾向があり、放置すると細菌が血流に乗って敗血症という重篤な状態になることもあるため、早急な治療が必要です。

腎盂腎炎が疑われる高熱や背部痛を伴う場合は入院して点滴治療を行うケースもあります。

前立腺炎（ぜんりつせんえん）【男性の場合】

男性特有の原因として前立腺炎があります。前立腺に細菌が感染して炎症を起こす急性細菌性前立腺炎では、排尿時の痛みに加え発熱や会陰部（肛門と陰嚢の間）痛、残尿感など多彩な症状が現れます。適切な治療を怠ると慢性前立腺炎へ移行し、長引くことがあります。非細菌性の前立腺炎（慢性骨盤痛症候群）もあり、こちらはデスクワークや運転などによる振動・ストレスが関与するとされます。

その他の原因疾患

上記以外にも、尿路結石（特に尿管結石）も排尿痛の原因として見られます。

尿管に結石が詰まると尿がスムーズに流れなくなり、排尿時に激しい痛みや腹部の差し込むような痛みを引き起こします。石が尿道にとどまる尿道結石では排尿痛とともに尿が出にくくなることもあります。

さらに、間質性膀胱炎（膀胱の特殊な慢性炎症）や膀胱腫瘍・尿道腫瘍などの稀な疾患が潜んでいる場合もあります。こうした疾患では慢性的に排尿時の痛みが続いたり、肉眼的な血尿が見られることがあります。長期間症状が改善しない場合や血尿が続く場合は、悪性腫瘍などの可能性も含めて泌尿器科専門医の診察を受けることが推奨されます。

症状の特徴と原因別の見分け方

同じ排尿痛でも、その痛みの感じ方や随伴症状によって原因疾患の手がかりを得ることができます。以下に症状の特徴と原因の見分け方を整理します。

排尿のタイミングによる痛みの違い

排尿痛が生じるタイミングは原因によって異なります。尿が出始めた直後に痛む場合は尿道や尿道口の炎症が考えられ、尿道炎や前立腺炎、クラミジア・淋菌感染症などが疑われます。一方、排尿の終わり頃に痛みが増す場合は膀胱や尿管が原因のことが多く、急性膀胱炎や尿管結石、あるいは腎盂腎炎などが考えられます。排尿中ずっと痛むようなときは、膀胱炎が繰り返し起こって慢性化している場合や、重い腎盂腎炎、尿道狭窄症などの可能性があります。

随伴症状から考えられる原因

排尿痛以外に現れる症状も重要な手がかりです。たとえば尿が近い（頻尿）、残尿感、下腹部の違和感を強く伴う場合は膀胱炎の可能性が高いでしょう。尿道からの膿や分泌物が見られる、尿が白く濁るといった症状を伴えば淋菌性尿道炎やクラミジア尿道炎など性感染症を疑います。

尿に肉眼で分かる血が混じる（血尿）場合、膀胱炎でも起こりえますが、結石が尿路を傷つけた場合や腎盂腎炎、まれに腫瘍でも血尿が出現します。発熱（特に38℃以上の高熱）や背中～脇腹の痛みを伴う場合は腎盂腎炎など上部尿路の感染を示唆し、緊急の対応が必要です。このように症状の出方を総合的に見ることで、ある程度原因の見当をつけることができますが、正確な診断には医療機関での検査が必要です。

排尿痛の治療法

原因となる疾患に応じて適切な治療を行うことで、排尿痛の症状は改善します。細菌感染が原因の場合は、一般的に抗生物質（抗菌薬）の内服治療が第一選択です。

膀胱炎や腎盂腎炎、細菌性前立腺炎、尿道炎などでは、尿検査や必要に応じ培養検査で原因菌を特定し、それに有効な抗菌薬を数日～数週間服用します。

服薬開始後、通常は1週間以内に痛みや頻尿などの症状が軽快してきますが、症状が治まっても自己判断で途中で薬の服用を止めないことが重要です。医師の指示通りに最後まで飲み切ることで、菌を確実に排除し再発や耐性菌の出現を防ぐことができます。

症状が強い場合には、鎮痛剤や解熱剤を併用することもあります。

特に尿路結石による激しい排尿痛がある際は、鎮痛薬で痛みを和らげつつ水分摂取と適度な運動を行い、小さな結石であれば自然排石を促す方法をとります。結石のサイズや部位によっては、衝撃波破砕術（体外衝撃波結石破砕術）や内視鏡手術で結石を除去する治療が必要になることもあります。

前立腺炎の場合は、細菌性であれば抗生剤治療を数週間続けます。非細菌性前立腺炎では原因が明確でないため難治ですが、抗炎症薬や生活習慣の見直し、ストレス緩和などで症状改善を図ります。いずれの場合も排尿痛を感じたら早めに受診し、適切な治療を受けることが肝心です。放置して悪化すると腎臓機能の低下や深刻な合併症につながる恐れがあるため、「様子を見よう」と長引かせないようにしましょう。

受診の目安

排尿痛は軽度であれば自然に改善することもありますが、次のような場合は放置せず医療機関の受診を検討してください。

高熱や背中の痛みを伴う

38℃以上の熱、脇腹〜背中にかけての痛みがある場合、腎盂腎炎など重症の可能性があります。その日のうちにでも医療機関を受診するのが望ましい状態です。

血尿が見られる

肉眼でわかる血尿が出る、あるいは茶褐色の尿が続く場合、膀胱炎のこともありますが腎・尿管結石や腫瘍の可能性もあります。速やかに検査を受けましょう。

痛みや違和感が数日経っても改善しない

軽い膀胱炎症状でも、2～3日セルフケアを行っても改善しない場合は受診してください。慢性化させないためにも早めの治療が有効です。

何度も排尿痛を繰り返している

再発を繰り返す膀胱炎などが疑われます。再発時には前回とは違う菌に感染していることもあり、放置すると腎臓へのダメージにつながる恐れがあります。医師に相談し、必要なら長期的な予防策を立てましょう。

妊娠中・持病がある場合

妊娠中の方や糖尿病など免疫低下をきたしやすい持病のある方は、尿路感染が重症化しやすいため症状が軽度でも早めに受診してください。妊婦の膀胱炎は早産のリスクとなることもあります。

以上のような状況では自己判断せず医療機関で検査・治療を受けることが安全です。

最後に

当院では忙しい方でも受診しやすい環境を整えています。

新宿駅南口から徒歩0分の場所にあり、仕事帰りにもすぐ立ち寄れます。さらに院内処方を行っているため、診察後に院外薬局へ行く手間なくスムーズにお薬を受け取ることが可能です。

平日夜間も対応しておりますので、日中お忙しいビジネスパーソンの方でも安心してご来院ください。