危険なサインを見逃さない!熱中症の症状と正しい応急処置

熱中症とは

  • 熱中症は、高温多湿の環境下で体温調節がうまく機能しなくなり、体内に熱がこもることで起きる健康障害。
  • 症状は軽度から重度まで幅広く、段階的に進行する。
  • 初期症状を見逃すと、命にかかわる重篤な状態へと急変することもある。

熱中症は、外気温の上昇だけでなく湿度の高さや通気性の悪さ、体調不良、脱水などの要因が重なることで発症します。特に日本の夏は湿度が高いため、汗をかいても体温が下がりにくく、体内に熱がこもりやすい状況になります。

熱中症の分類は次のようになります。

  • 軽度(I度):めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、大量の発汗
  • 中等度(II度):頭痛、吐き気、だるさ、集中力の低下
  • 重度(III度):高体温、意識障害、けいれん、臓器障害

重症化のスピードは人によって異なりますが、子どもや高齢者、持病を持つ人は特にリスクが高いため注意が必要です。

めまい・立ちくらみ・失神

  • 直立中に突然ふらついたり、座り込んだりすることがある。
  • 血圧の低下や一時的な脳の血流不足が原因。
  • 強い日差しの下で長時間立っていると起きやすい。

熱失神は、体温が上昇することで末梢血管が拡張し、血圧が下がることによって起こる意識障害の一種です。特に直射日光の下に長く立っている場合などに起こりやすく、立ちくらみや目の前が真っ暗になるといった症状が見られます。

初期対応としては、涼しい場所に移動し、足を高くして横になることが推奨されます。また、水分と塩分の補給も忘れずに行うことが大切です。

筋肉のけいれん

  • 発汗による電解質(ナトリウムなど)の喪失が原因。
  • 特にふくらはぎや腕、腹部に痛みを伴うけいれんが起きる。
  • 暑い中での作業やスポーツ中に多く見られる。

熱けいれんは、発汗によって体内の塩分が失われ、水だけを補給した場合などに起こります。筋肉が急に強く収縮し、激しい痛みを感じることが特徴です。運動中の若者やスポーツ選手に多く見られます。

対策としては、水分だけでなく、スポーツドリンクや経口補水液など電解質を含むものを補給することが重要です。けいれんがある部位は軽くマッサージし、安静を保ちましょう。

頭痛・吐き気・だるさ

  • 頭が重い、吐き気がある、体がだるいなどの症状。
  • 脱水と体温上昇による自律神経の乱れが関与。
  • 早期対応しないと重症化の恐れあり。

この段階になると、身体が限界に近づいてきている証拠です。水分と塩分が足りず、体の中のバランスが崩れている状態であり、特に頭痛と吐き気は体が熱を放出できていないサインでもあります。

この症状を見逃すと、意識障害や臓器障害といったIII度熱中症へ進行する可能性があります。早めに冷却と水分補給、休息を取ることが非常に重要です。

異常な汗の出方

  • 初期は大量の汗をかくが、重症化すると逆に汗が止まる。
  • 無汗状態は特に危険なサイン。
  • 高齢者はもともと汗をかきにくいため注意。

人間の体は体温が上がると汗をかいて冷却しようとしますが、重症の熱中症ではその調整機能が破綻します。特に汗が全く出ていないのに体温が異常に高い場合、体温調節が完全に破綻した状態であり、極めて危険です。

このような場合は迷わず救急車を呼び、迅速な医療処置を受ける必要があります。

高体温・高熱のメカニズム

  • 体温が40℃を超えると、脳や内臓へのダメージが起きやすくなる。
  • 自然放熱が間に合わなくなると「中核体温」が急上昇。
  • 衣服の通気性や湿度も大きく影響する。

体温が40℃を超えると、体のたんぱく質が変性し、臓器機能が障害され始めます。特に重要なのが「中核体温」で、これは脳や心臓、肝臓など体の中心部分の温度を示します。

中核体温の上昇は、短時間で命にかかわる状態へとつながるため、速やかな冷却と水分補給が必要です。服を脱がせて通気性をよくし、首・脇・太ももなどの動脈を氷などで冷やすのが有効です。

意識障害のサイン

  • 呼びかけに反応しない・ろれつが回らないなどが見られる。
  • 自力歩行が困難になるケースもある。
  • 明らかな中枢神経障害であり、すぐに救急要請が必要。

この段階は、すでに生命の危険が差し迫っている状態です。反応が鈍い、質問に答えられない、会話にならないなどの意識障害や、ふらついて歩けないといった状態があれば即座に119番通報をしてください。

特に高齢者や子どもは症状の進行が早いため、少しでも異変を感じたら迷わず医療機関の判断を仰ぐことが重要です。

すぐできる応急処置

  • 日陰や涼しい場所へ移動。
  • 衣服を緩めて熱を放散。
  • 首・脇の下・太ももを冷却。
  • 冷たいスポーツドリンクや経口補水液で水分補給。

軽度~中等度の熱中症には、すばやい応急処置が非常に有効です。応急処置のポイントは以下の4つです。

  1. 移動:直射日光の当たらない、風通しの良い場所に移す。
  2. 冷却:首・脇の下・太ももなど太い血管が通る部位を冷やす。
  3. 脱衣:衣服を緩めて体温の放散を促す。
  4. 水分補給:スポーツドリンク、経口補水液、食塩水(0.1~0.2%濃度)などで水分と塩分を同時に補う。

重症の場合の対応

  • 意識がない、吐き気が強い、発熱が続く場合はすぐに救急車を。
  • 回復が見込めないときは自己判断を避ける。
  • 高齢者や子どもは早めの通院を。

熱中症のIII度(重度)では、自力での回復がほぼ望めません。水分が摂れない、嘔吐が続く、反応が鈍いなどの症状があれば、すぐに119番に連絡してください。

病院では点滴や体温管理が行われ、必要に応じて集中治療も検討されます。自宅で様子を見るのは非常に危険なので、判断に迷った場合は医療機関へ。

予防策も簡単紹介

  • こまめな水分補給(のどが渇く前に)適度な塩分補給
    • (注:スポーツドリンクの飲みすぎや、塩分の過剰摂取にはご注意下さい)
  • 日陰の活用・通気性の良い服装
  • 帽子や日傘、冷却グッズの活用
  • 室内でもエアコンを積極的に使う
  • 熱中症警戒アラートの確認

熱中症は「予防」がもっとも重要です。環境省も推奨しているように、「のどが渇く前に水分を摂る」「暑さを避ける」ことが基本です。

特に屋外活動時は帽子や日傘、ネッククーラーなどを併用し、室内でも28℃を超えるようなら冷房を使用しましょう。高齢者や子どもには、周囲が声かけすることも重要です。

まとめ

  • 熱中症は軽度から重度まで進行する可能性がある
  • めまいやけいれん、吐き気は初期のサイン
  • 汗の出方や体温上昇が危険の兆候
  • 応急処置は「冷やす・脱がす・飲ませる・寝かせる」
  • 意識障害や自力で飲水できない場合は即救急対応
  • 予防には「水分補給」「暑さ対策」「アラートの確認」が基本